ピカソの絵
2014.5 桃谷法信
 絵は、感動した光のいのちを表現しているのだと思います。
佐賀県立美術館で開催されている「ポーラ美術館展」(佐賀新聞社主催:4/22〜6/22)を見に行きました。
 3つのブースがあり、
@光の中へ〜印象派の革新と影響 
A躍動する色彩〜ポスト印象派から野獣派(フォーヴ)へ 
B造形の冒険〜ピカソとブラック
 という構成で展示してありました。

 @は、マネ、クールベ、コローなどの印象派前の画家たちの作品とモネ、ルノワールなどの印象派の絵が比較できるように展示されてあり、作風の変遷が分かるように工夫されていました。

      
 
 睡蓮:モネ   ヴィゲラ運河にかかるグレース橋:ゴッホ  花売り:ピカソ

 Aは、セザンヌやゴッホなど光を明るく表現する作品がみられ、南フランスの風光が感じられました。

 Bは、「キュピスム」(対象を一度解体させ、抽象化して再構築する画法)の巨匠、ピカソとブラック、ローランサンの作品で、いろいろな角度から見た対象物の再構築された絵に圧倒され、ピカソの心の中を覗き見たような錯覚にとらわれて、周りの音が聞こえなくなりました。

 ピカソの絵を見ながら、これは、阿弥陀様のような目で見た風光かも知れないと思いました。色々な角度から自在に対象物を表現しようとしているからです。ご存知のようにピカソの絵は、ちょっと見は、幼児が描いたのかなと思われるような変な絵です。顔が二つに見えるように描いてあったり、肘が逆方向に曲がっていたり、目の大きさや数、いろいろな角度から視点を違わせて描こうとしたピカソの新世界への挑戦が迫ってきました。奥行や構図などに重きを置くのではなく、うまく描こうとする欲を抑えて、徹底的にぺったんこの世界を、二次的世界を表現したかったのでしょう。目に見える表層の奥深いところにある深層風景を引き出そうという試みを、絵で表現しようとするピカソの態度が、100年経っても色あせることなく人々の心を魅了するのでしょうね。

 しかし、「わだば、ゴッホになる.。」と棟方志功さんがあこがれた
ゴッホにしろ、モナリザの絵を盗んだ疑いをかけられたピカソにしろ、苦悩の中に、光を見つけたのだと思います。
 ゴッホは、「カラスの麦畑」を描き上げた後、短銃自殺していますし、ピカソに至っては、女性関係の苦悩、共産党員としての反体制思想、目まぐるしく変わる作風、鳩を異常に好きだったことなど、苦悩の中で、みんな、いのちが磨かれていくのだと思いました。
 お釈迦様が「人生、苦なり。」とおっしゃった意味は、その苦悩から、学ぶことこそ、悟りへの道だということだと思います。
 ゴッホもピカソも、親鸞様も、みんな、苦悩を転じて、いのちの意味を見つけていかれたのです。
*人生は苦なり。・・・四諦とは悟りへ到達するための道筋のことであり、苦諦、集諦、滅諦、道諦の4つの過程を言う。諦というのは、あきらめるという意味ではなく、明らかにするという意味です。
苦諦
(くたい)

我々の生活は「苦しみ」に満ちあふれていることを見極める。

集諦
(じったい)

「苦しみ」の原因は欲望や執着心であることを見極める。

滅諦
(めったい)

「苦しみ」から逃れるには、その欲望や執着心を捨て去ることで あると見極める。

道諦
(どうたい)

それを導く具体的な方法「八正道」を実践する。


言葉を味わう D 言葉の恕


 たんぽぽがいっぱい咲いています。誰が種をまいたのでしょう。
たんぽぽの綿毛を、恕というのだそうです。風に乗ってどこまでも飛んでいきます。落ちたところで落在し、根を伸ばします。
 このコーナーは、あまり乗り気がせず、やめようかと思っていたら、曲川小学校の松尾博之先生が、飲んだ席で、「先月の言葉を味わうの中の【恋愛は、美しい誤解のもとで成り立つ】というところにラインを引きましたよ。」とおっしゃいました。思いもしなかったことにびっくりして、やっぱり言葉は、不思議だなと思い、これこそたんぽぽの恕と同じように言葉の恕だとおもったのでした。

元京都大学総長の故平澤興さんは、論語の一節がお好きだったようで著作や講演によく引用されています。
子貢(しこう)は聞いた。
「先生、たった一語で、一生それを守っておれば間違いのない人生が送れる。そういう言葉がありますか」
孔子は、「それは、恕(じょ)かな(其恕可)」と答える。
孔子が「恕なり(其恕也)」と断定せず、「恕か」と曖昧(あいまい)に答えたところに、なんとも味わい深い孔子の人柄を感じる、と平澤さんは述べておられます。

ちなみに、恕というのは、ゆるす、おもいやる、はかる。という意味で
如の心、即ち、一切を包容して進歩向上せしめんとする心のことです。

   5月の行事予定

13日(日) むりょうじゅ会例会 19:30〜 御文章について
       
     
*以前は、御文章披露という法座を勤めていましたが、
       むりょうじゅ会で、御文章を味わいます。
        どうぞ、お参りください。


14日(月) 原明地区お講 

28日(水) 雅楽練習会 
19:30〜
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